マンジャロの使用を検討しているものの、「自分は禁忌にあたるのだろうか」「持病があっても使えるのか」と不安を感じていませんか?
マンジャロ(一般名:チルゼパチド)はGIP/GLP-1受容体作動薬として高い血糖降下効果と体重減少効果が注目されている一方、添付文書には投与してはならない「禁忌」の条件が明確に定められています。
禁忌に該当する方が使用すると命に関わる重篤な健康被害につながるおそれがあるため、処方を受ける前に自分が該当しないかどうかを正確に確認しておくことが欠かせません。
さらに、禁忌ほど厳格ではないものの注意が求められる「慎重投与」の対象者や、飲み合わせに配慮すべき「併用注意」のお薬も存在し、これら3段階の違いを正しく理解しておくと医師への相談がスムーズに進みます。
この記事では、マンジャロの添付文書に基づく禁忌条件を一覧で示したうえで、慎重投与が必要なケースや併用注意のお薬、減量目的で使用する場合の注意点までわかりやすくまとめました。
マンジャロとは|基本情報と作用の仕組み
マンジャロは有効成分にチルゼパチドを含む注射タイプの2型糖尿病治療薬であり、2022年に米国、2023年4月に日本で承認されました。
従来のGLP-1受容体作動薬がGLP-1のみに作用するのに対し、マンジャロはGIPとGLP-1の2つのインクレチン受容体に同時に作用する「デュアルアゴニスト」である点が最大の特徴です。
減量の領域でも高い効果が注目されていますが、日本では肥満症治療薬としては未承認であり、減量目的での使用は自由診療の扱いとなります。
禁忌や慎重投与の条件を正確に理解するためには、まずマンジャロの作用機序と投与方法の基本を押さえておくことが重要です。
マンジャロ(チルゼパチド)のGIP/GLP-1デュアル作用とは
マンジャロの有効成分であるチルゼパチドは、食事のあとに腸から分泌されるGIPとGLP-1という2種類のインクレチンホルモンの受容体に同時に結合して作用するお薬です。
GLP-1受容体への作用によって膵臓からのインスリン分泌が促進されるとともに、血糖値を上昇させるグルカゴンの分泌が抑制され、食後の血糖コントロールが改善されます。
一方、GIP受容体への作用は脂肪組織や肝臓でのインスリン感受性を高める効果が報告されており、この二重の働きが従来のGLP-1単独薬を上回る血糖降下効果と体重減少効果をもたらすと考えられています[1]。
さらに、脳の摂食中枢への作用により食欲が自然に低下し、胃からの食物排出を遅らせることで少量の食事でも満腹感が持続する効果が得られます。
こうした複数の作用経路を持つお薬だからこそ、使用できない条件(禁忌)や注意が必要な条件が明確に設定されている点を理解しておきましょう。
用量と投与スケジュール|2.5mgから最大15mgまでの増量ステップ
マンジャロは週1回の皮下注射で投与するお薬であり、2.5mg・5mg・7.5mg・10mg・12.5mg・15mgの6種類の用量が用意されています。
治療は週1回2.5mgの低用量から開始し、4週間投与したのちに維持用量である5mgへ増量するのが基本的な流れです[1]。
5mgで効果が不十分な場合は、4週間以上の間隔をあけて2.5mgずつ段階的に増量でき、最大用量は週1回15mgまでと定められています。
この段階的な増量方式は消化器系の副作用(吐き気・下痢・便秘など)を最小限に抑えるための設計であり、自己判断で急激に増量することは禁じられています。
投与部位は腹部または大腿部の皮下であり、毎週同じ曜日に注射することで効果が安定しやすくなります。
マンジャロの禁忌一覧|添付文書に基づく3つの条件
マンジャロの添付文書には「禁忌(次の患者には投与しないこと)」として3つの条件が明記されており、該当する方には一切投与できません。
「禁忌」とは単に「注意が必要」というレベルではなく、「絶対に使用してはならない」という医薬品においてもっとも厳格な制限を意味します。
ここに該当する方がマンジャロを使用すると、お薬の効果が発揮されないばかりか命を脅かす重篤な事態を招くリスクがあるため、処方前のスクリーニングで必ず確認される項目です。
以下では、添付文書に記載されている3つの禁忌条件をそれぞれ解説します。
成分(チルゼパチド)に対して過敏症の既往がある方
マンジャロの有効成分であるチルゼパチドまたは添加物に対して、過去にアレルギー反応(過敏症)を起こしたことがある方は禁忌に該当します[1]。
過敏症の反応としては、蕁麻疹・全身のかゆみ・顔や唇の腫れ・呼吸困難・血圧低下といったアナフィラキシーの症状が含まれ、いずれも急速に進行する可能性がある重篤な反応です。
2023年7月には日本の添付文書に「アナフィラキシー」「血管性浮腫」が重大な副作用として追記されており、初回投与後や用量変更後にとくに注意が必要とされています。
過去にマンジャロだけでなく、同様のGLP-1受容体作動薬(オゼンピック・リベルサス・ビクトーザなど)でアレルギー反応を起こした経験がある方も、念のため医師に申告しておくことが望ましいでしょう。
成分へのアレルギーは予測が難しいため、初回投与時には体調の変化に細心の注意を払い、異常を感じたら直ちに医療機関を受診してください。
糖尿病性ケトアシドーシス・糖尿病性昏睡・1型糖尿病の方
糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)や糖尿病性昏睡・前昏睡の状態にある方、および1型糖尿病の方はマンジャロの禁忌に該当します[1]。
DKAや昏睡状態は体内のインスリンが極度に不足した緊急事態であり、速やかなインスリン投与による治療が必須となるため、インスリンの代替薬ではないマンジャロでは対処できません。
実際に、日本でのマンジャロ発売後半年間にインスリン依存状態の患者がマンジャロに切り替えた結果DKAを発症し、因果関係を否定できない死亡例が報告されています。
1型糖尿病は膵臓のβ細胞が自己免疫によって破壊されインスリンをほぼ産生できない疾患であり、マンジャロのようなインクレチン関連薬では根本的な血糖管理が不可能です。
2型糖尿病と診断されている方であっても、インスリン依存状態が進んでいるケースではマンジャロへの切り替えが危険となるため、医師が投与前にインスリン依存の有無を慎重に確認します。
重症感染症・手術など緊急時にインスリン治療が必要な方
高熱を伴う重症感染症にかかっている方や、外科手術の前後などの緊急時で厳密な血糖管理が求められる場面では、マンジャロの使用は禁忌とされています[1]。
こうした状況ではストレスホルモン(コルチゾールやアドレナリンなど)の分泌が急増して血糖値が急上昇するため、速やかかつ精密な調節が可能なインスリン製剤による管理が不可欠です。
マンジャロは週1回投与の持続性製剤であり、投与量の微調整が難しいうえに効果の立ち上がりにも時間がかかることから、緊急時の血糖管理には適していません。
また、手術前後は食事が制限されることが多く、マンジャロの食欲抑制効果が加わると低血糖や栄養不足のリスクがさらに高まる点も禁忌とされる理由のひとつです。
手術の予定がある場合は事前に主治医へマンジャロを使用中であることを伝え、術前の休薬期間や術後の再開時期について指示を仰ぐことが大切です。
禁忌ではないが慎重投与が必要な方|7つの該当条件
添付文書上の禁忌には該当しないものの、マンジャロの使用にあたって医師が慎重に判断すべきとされている患者層が複数存在します。
「慎重投与」とは、「投与してはならない」のではなく「通常よりもリスクが高いため注意深く経過を観察しながら投与する」ことを意味する分類です。
ここに該当する方は、処方前に医師へ既往歴や現在の体調を正確に伝えることで、用量調整や検査頻度の見直しなど適切な安全策を講じてもらえる可能性があります。
以下では、慎重投与の対象となる7つの条件を4つのカテゴリーに分けて解説します。
重度の胃腸障害(胃不全麻痺など)がある方
重症の胃不全麻痺(ガストロパレシス)をはじめとする重度の胃腸障害がある方は、マンジャロの慎重投与の対象に指定されています[1]。
マンジャロには胃の内容物の排出を遅らせる作用があり、もともと胃腸の動きが著しく低下している方に投与すると、消化管の症状がさらに悪化するおそれがあるためです。
具体的には、強い吐き気・嘔吐・腹部膨満感・高度な便秘が長期間にわたって持続し、栄養状態の悪化や脱水を引き起こすリスクが高まるでしょう。
過去に腸閉塞(イレウス)を起こしたことがある方や、腹部の外科手術歴がある方も同様に注意が必要とされています。
胃腸の疾患で通院中の方は、マンジャロの処方を受ける前に必ずその旨を申告し、医師の判断を仰ぐことが安全な使用の第一歩です。
膵炎の既往歴・胆石症の既往がある方
過去に急性膵炎を経験したことがある方は、マンジャロの投与開始にあたって慎重な判断が求められます。
GLP-1受容体作動薬のクラス全体で急性膵炎の報告が0.1%未満の頻度であるものの存在しており、マンジャロでも添付文書に重大な副作用として記載されています[1]。
膵炎の既往がある方では再発リスクをどう評価するかが焦点となりますが、2025年に発表された大規模研究では、GLP-1製剤使用による膵炎再発リスクの上昇は認められなかったとの報告もあります。
同様に、胆石症の既往がある方も注意対象です。マンジャロによる急激な体重減少は胆嚢に負担をかけ、胆石の新規発生や胆嚢炎を誘発する可能性が指摘されています。
持続的な上腹部痛や背部痛、発熱、黄疸といった症状があらわれた場合はただちにマンジャロの使用を中止し、速やかに医療機関を受診してください。
妊娠中・授乳中・妊娠を希望している方
妊娠中または妊娠している可能性のある女性には、マンジャロを投与せずインスリン製剤を使用することが添付文書に明記されています[1]。
動物実験(ラット)では、ヒトの臨床最大用量を下回る曝露量で骨格奇形や内臓奇形といった胎児毒性が認められており、これらの所見が妊婦への投与を避ける根拠となっています。
ヒトにおける奇形児発生率の上昇を示す臨床データは現時点で存在しないものの、「データがないから安全」ではなく「安全性が確認されていない以上は使わない」という原則が適用されています。
妊娠を計画している女性がマンジャロを使用している場合は、最終投与から少なくとも1か月間の避妊が求められます。
授乳中についてもチルゼパチドがヒト母乳中へ移行する可能性があり、乳児への影響が不明であるため、治療上の有益性と母乳栄養の有益性を比較して医師と方針を決める必要があります。
高齢者・腎機能障害・肝機能障害がある方
高齢者は一般的に生理機能が低下しているため、マンジャロの副作用(消化器症状・低血糖・脱水など)が強く出やすく、慎重な投与が必要とされています。
とくにマンジャロによる体重減少が過度に進行すると、サルコペニア(筋肉量の減少)やフレイル(虚弱)を助長するおそれがあり、投与開始時にBMI 23未満の方では安全性が検討されていない点も留意すべきです[1]。
腎機能障害については、軽度から中等度の場合は大きな影響がないとされるものの、重度の腎障害や透析を受けている方では下痢・嘔吐による脱水が急性腎障害につながるリスクが高まります。
肝機能障害についても重度の場合はデータが不十分であるため、慎重に投与量を調整する必要があるでしょう。
高齢であることや臓器機能の低下は禁忌には該当しませんが、投与量を低めに設定し定期的な検査で体調を確認しながら治療を進めることが安全な使用のカギとなります。
マンジャロの併用注意薬|「併用禁忌はゼロ」だが注意すべき組み合わせ
マンジャロの添付文書には「併用禁忌」に該当するお薬は現時点で一切記載されていません。
つまり、「マンジャロと一緒に使うと絶対にダメなお薬」は存在しないというのが正確な情報です[1]。
ただし、「併用注意(一緒に使うとリスクが高まる可能性があるため注意が必要なお薬)」は複数指定されており、医師や薬剤師に現在使用中のお薬を正確に伝えることが安全な治療の前提となります。
ここでは、とくに注意が必要な4つの薬剤カテゴリーについて具体的に解説します。
SU薬・インスリン製剤との併用で低血糖リスクが上昇する
マンジャロと他の糖尿病治療薬を併用する場合、もっとも警戒すべきリスクは低血糖の発現です。
マンジャロ単独では血糖値が高いときにのみインスリン分泌を促すため低血糖リスクは比較的低いとされていますが、SU薬(スルホニルウレア薬)やインスリン製剤は血糖値に依存せずインスリンを分泌・補充する作用を持ちます。
両者が重なると血糖値が過度に低下し、冷や汗・手の震え・動悸・めまい・意識消失といった低血糖症状を引き起こすおそれがあるでしょう[1]。
併用する場合はSU薬やインスリン製剤の減量が検討されることが多く、医師が患者の状態に合わせて用量を調整します。
低血糖の初期症状を感じた場合はただちにブドウ糖や糖分を含む飲食物を摂取し、症状が改善しないときは速やかに医療機関を受診してください。
経口避妊薬(ピル)の吸収が遅れ効果が減弱する可能性
マンジャロの胃内容排出を遅らせる作用により、同時に服用した経口避妊薬(低用量ピル)の吸収が遅れ、血中濃度が低下する可能性が報告されています。
チルゼパチドと経口避妊薬の併用に関する研究では、避妊薬の最高血中濃度(Cmax)と血中濃度時間曲線下面積(AUC)がいずれも統計的に有意に低下したことが示されました。
このデータをもとにマンジャロの製造元であるイーライリリー社は、経口避妊薬を「併用注意」に設定しています。
避妊効果が完全に消失する可能性は低いと考えられているものの、予定外の妊娠を避けるためには併用中の追加的な避妊手段について医師と相談しておくことが望ましいでしょう。
とくにマンジャロの投与開始直後や増量直後は胃排出遅延の影響が強く出やすい時期であるため、ピルの服用タイミングについても医師や薬剤師に確認することをおすすめします。
ワルファリンとの併用で抗凝固作用に影響が出る可能性
抗凝固薬であるワルファリンを服用中の方がマンジャロを併用すると、ワルファリンの吸収や代謝に影響が及び、抗凝固作用が変動する可能性が指摘されています。
マンジャロの胃腸運動を遅らせる作用によって経口薬の吸収時間が変化し、ワルファリンの効き方が予測しにくくなることが原因として考えられます。
ワルファリンは治療域が狭いお薬であり、効果が弱まれば血栓形成のリスクが、効果が強まれば出血のリスクがそれぞれ高まるため、慎重なモニタリングが求められます。
併用する場合はINR(国際標準化比)の測定頻度を通常より増やし、ワルファリンの用量を必要に応じて調整することが推奨されています。
現在ワルファリンを処方されている方は、マンジャロの開始前に必ず処方医にその旨を伝えてください。
DPP-4阻害薬やゼップバウンドとの併用が推奨されない理由
DPP-4阻害薬(ジャヌビア・グラクティブなど)はGLP-1とGIPの分解を抑えることで血糖値を下げるお薬であり、マンジャロと作用経路が重複します。
両者を併用した場合の臨床試験データは存在せず、有効性と安全性が確認されていないため、添付文書では併用が推奨されていません[1]。
同様に、ゼップバウンド(肥満症治療薬として承認されたチルゼパチド製剤)とマンジャロは有効成分が同一であるため、併用すると過量投与と同等の状態になるリスクがあります。
「名前が違えば別のお薬」と誤認するケースも報告されているため、処方元が異なる複数の医療機関を利用している方はとくに注意が必要です。
現在服用中のすべてのお薬(サプリメントや健康食品を含む)を一元的に医師へ伝えることが、併用リスクを回避するもっとも確実な方法といえるでしょう。
日本と米国で異なる禁忌の範囲|甲状腺髄様癌・MEN2に関する警告
マンジャロの禁忌に関して注目すべき点のひとつに、日本と米国で設定されている禁忌の範囲が異なるという事実があります。
米国FDAの添付文書では甲状腺髄様癌(MTC)と多発性内分泌腺腫症2型(MEN2)に関する記載が日本よりも厳格に設定されており、インターネット上の海外情報に触れて不安を覚える方も少なくないでしょう。
ここでは、日米の禁忌設定の違いとその背景を整理し、日本での治療において何に注意すべきかを解説します。
米国FDAは甲状腺髄様癌の家族歴・MEN2を禁忌+黒枠警告に設定
米国FDAはマンジャロの添付文書に「黒枠警告(Boxed Warning)」というもっとも重大な警告を付与しています。
これはチルゼパチドを含むGLP-1受容体作動薬がラットの動物実験において甲状腺C細胞腫瘍(甲状腺髄様癌を含む)を発生させたことに基づく措置です。
この結果を受けて、米国では甲状腺髄様癌の既往または家族歴がある方、およびMEN2(多発性内分泌腺腫症2型)の方に対してマンジャロは「禁忌」とされています。
ただし、ラットで確認された甲状腺C細胞腫瘍がヒトにも起こるかどうかは不明であり、現時点でヒトにおける因果関係は確立されていない点も重要です。
米国での黒枠警告は「最大限の慎重さをもって対処せよ」という規制当局の姿勢を反映したものであり、必ずしもヒトでの危険性が証明されたことを意味するわけではありません。
日本の添付文書では禁忌に含まれていないが甲状腺の定期確認が推奨されている
日本のマンジャロ添付文書では、甲状腺髄様癌やMEN2は禁忌には含まれていません。
ただし、添付文書の「その他の注意」のセクションにおいて動物実験での甲状腺C細胞腫瘍の報告が記載されており、「投与中は甲状腺関連の症候の有無を確認し、異常が認められた場合には専門医を受診するよう指導すること」と明記されています[1]。
したがって日本においても、マンジャロ使用中は首の腫れ・嗄声(声のかすれ)・飲み込みにくさといった甲状腺の異常を示唆する症状に注意を払うことが求められます。
家族に甲状腺髄様癌の既往がある方やMEN2と診断された方は、日本の添付文書上は禁忌ではないものの、使用前に医師とリスク・ベネフィットを十分に話し合ったうえで判断するのが安全でしょう。
日米で禁忌の範囲が異なることを知っておくと、海外の情報に接した際にも冷静に判断でき、不必要な不安を軽減することにつながります。
自由診療で使用する場合の禁忌と注意点
マンジャロは2型糖尿病の治療薬として承認されている一方、その強力な体重減少効果から自由診療での減量目的に処方されるケースが増加しています。
しかし、減量目的での使用は保険適用外であり、糖尿病治療とは異なるリスクや法的位置づけが存在する点を十分に理解しておく必要があります。
「自分は健康だから禁忌には関係ない」と安易に考えるのは危険であり、糖尿病でない方が使用する場合にも添付文書の禁忌条件はすべて適用されます。
ここでは、自由診療目的でマンジャロを使用する際にとくに留意すべき3つのポイントを解説します。
肥満症治療薬としては日本で未承認であることを理解する
マンジャロは日本国内において2型糖尿病の治療薬としてのみ承認されており、肥満症治療薬としての承認は得られていない現状があります。
米国ではチルゼパチドが「ゼップバウンド」という別の商品名で肥満症治療薬として2023年にFDAの承認を受けていますが、日本でゼップバウンドが肥満症治療薬として承認されたのは2025年であり、マンジャロ自体は減量目的では依然として適応外です。
自由診療として処方する場合、医師が個別にリスクとベネフィットを判断したうえで適応外使用をおこなう形になりますが、処方にあたっての検査やフォローアップの範囲はクリニックによって大きく異なります。
日本糖尿病学会はGLP-1受容体作動薬の適応外使用に対して注意喚起をおこなっており、適切な管理体制のもとで使用することの重要性を繰り返し強調しています[2]。
減量目的での使用を検討する際は、糖尿病の専門知識を持つ医師が在籍し、定期的な血液検査や経過観察をおこなう医療機関を選ぶことが安全への第一歩です。
BMI23未満の方への投与は安全性が検証されていない
マンジャロの添付文書には「投与開始時のBMIが23kg/m²未満の患者での本剤の有効性及び安全性は検討されていない」と明記されています[1]。
これは、臨床試験の対象がBMI 23以上の2型糖尿病患者に限定されていたためであり、標準体重やそれ以下の方に投与した場合の効果やリスクは医学的に未知数であることを意味します。
美容目的で「あと数キロ落としたい」というニーズに応じてBMI 23未満の方にマンジャロを処方するクリニックも存在しますが、エビデンスに基づいた安全性の担保がないことを認識しておくべきです。
過度な体重減少は筋肉量の低下・骨密度の減少・栄養失調・月経不順・免疫力の低下など多岐にわたる健康被害につながるリスクがあります。
添付文書でも「過度の体重減少がみられた場合は減量または投与中止を考慮すること」と注意喚起されているため、体重の推移を医師と定期的に確認しながら治療を進めることが重要でしょう。
医薬品副作用被害救済制度の対象外になるリスク
減量目的でマンジャロを使用した場合に重大な副作用が発生しても、国の「医薬品副作用被害救済制度」の対象にならない可能性が高い点は事前に理解しておくべき重要事項です。
医薬品副作用被害救済制度とは、医薬品を適正に使用したにもかかわらず重篤な副作用が発生した場合に、医療費や障害年金などの給付を受けられる公的制度です。
この制度は「承認された用法・用量に基づく適正使用」が前提条件であるため、2型糖尿病以外の目的(減量目的の自由診療)でマンジャロを使用した場合は適正使用とみなされず、救済の対象外となります。
万が一、急性膵炎や腸閉塞などの重篤な副作用が発生した場合、すべての治療費が自己負担となるリスクがあるということです。
この点を十分に理解したうえで、自由診療におけるマンジャロの使用を検討し、処方を受ける医療機関の医師からリスクに関する十分な説明を受けることが欠かせません。
よくある質問
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Q. マンジャロは1型糖尿病でも使えますか?
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1型糖尿病の方はマンジャロの禁忌に該当するため、使用できません。
1型糖尿病は膵臓からインスリンがほぼ分泌されない疾患であり、インスリン注射による治療が必須です。
マンジャロはインスリンの代替薬ではないため、1型糖尿病への投与は命に関わる高血糖やDKAを引き起こすリスクがあります。
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Q. マンジャロとピル(経口避妊薬)は一緒に使えますか?
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併用禁忌ではないため使用自体は可能ですが、マンジャロの胃排出遅延作用によりピルの吸収が遅れ、避妊効果が減弱する可能性が報告されています。
併用中は追加の避妊手段を検討することが望ましく、必ず医師に服用状況を伝えてください。
妊娠を避ける必要がある方はとくに慎重な対応が求められます。
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Q. 妊娠が判明した場合、マンジャロはすぐにやめるべきですか?
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妊娠が判明した場合は速やかにマンジャロの使用を中止し、処方医に報告してください。
動物実験で胎児毒性が確認されているため、妊娠中の使用は明確に避けるべきとされています。
血糖管理が必要な場合は、医師の指導のもとインスリン製剤への切り替えが検討されるでしょう。
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Q. 膵炎になったことがある人はマンジャロを使えますか?
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膵炎の既往がある方は禁忌ではなく「慎重投与」の対象であり、医師の判断によっては使用が可能です。
ただし、マンジャロを含むGLP-1受容体作動薬では急性膵炎がまれに報告されているため、投与中は腹痛や嘔吐などの初期症状に十分注意する必要があります。
開始前に既往歴を正確に伝え、定期的な経過観察のもとで使用することが大切です。
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Q. マンジャロに併用禁忌のお薬はありますか?
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現時点の添付文書において、マンジャロと「併用禁忌」に設定されているお薬はありません。
ただし、SU薬・インスリン製剤・経口避妊薬・ワルファリンなど複数の「併用注意」薬が指定されています。
服用中のすべてのお薬を医師に伝えたうえで、必要な用量調整やモニタリングの方針を確認してから治療を開始してください。
まとめ
マンジャロの添付文書に記載されている禁忌は「成分への過敏症」「糖尿病性ケトアシドーシス・昏睡・1型糖尿病」「重症感染症や手術時」の3つであり、これらに該当する方は絶対に使用できません。
禁忌には該当しないものの、重度の胃腸障害・膵炎の既往・妊娠中や授乳中・高齢者・腎機能障害・肝機能障害のある方は「慎重投与」の対象であり、医師との綿密な相談が不可欠です。
マンジャロに「併用禁忌」のお薬は現時点で存在しませんが、SU薬やインスリンとの併用による低血糖リスク、経口避妊薬の効果減弱、ワルファリンの作用変動などには十分な注意が求められます。
米国では甲状腺髄様癌やMEN2が禁忌かつ黒枠警告に設定されている一方、日本では禁忌に含まれていないという日米の違いも押さえておくべき重要なポイントです。
自由診療では、BMI 23未満への安全性が未検証であること、医薬品副作用被害救済制度の対象外になる可能性があることを事前に理解しておく必要があります。
禁忌・慎重投与・併用注意のいずれにおいても、自己判断で使用を決めるのではなく、現在の健康状態・既往歴・服用中のお薬をすべて医師に正確に伝えることが安全な治療の大前提です。
参考文献
[1] PMDA 医薬品医療機器総合機構「マンジャロ皮下注アテオス 添付文書(2025年7月改訂 第8版)」 https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00070640.pdf
[2] 日本糖尿病学会「GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する見解」 https://www.jds.or.jp/
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療アドバイスではありません。
お薬の服用に関しては必ず医師にご相談ください。
※効果・効能・副作用のあらわれ方は個人差がございます。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。