「オゼンピックが製造中止になったって本当?」「なぜ手に入らなくなったの?」「今も使えるの?」と、不安を感じている方は多いのではないでしょうか。
結論からいうと、オゼンピック(一般名:セマグルチド)は完全に製造中止になったわけではありません。
過去に欧州の提携製造会社がFDA(米国食品医薬品局)の査察を受け、製造・輸出を一時的に中止した経緯があり、その影響で日本国内での出荷が停止されました。
その後、新しい規格の「オゼンピック皮下注2mg」として再販売されており、お薬自体の製造は継続されています。
ただし、世界的な減量需要の急増により、現在も供給が不安定な状況が続いている医療機関もあります。
この記事では、オゼンピックの「製造中止」と誤解された経緯と本当の理由、現在の供給状況、代替薬の選択肢、今後の見通しまでを分かりやすく解説します。
オゼンピックとは?なぜ注目されているのか
まずは、オゼンピックがどのようなお薬で、なぜこれほど話題になっているのかを簡単に確認しておきましょう。
週1回の注射で食欲を抑えるGLP-1受容体作動薬
オゼンピックは、有効成分としてセマグルチドを含む週1回投与の注射薬です。
体内で分泌されるGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)というホルモンと同じ働きをするお薬で、GLP-1受容体作動薬と呼ばれています。
もともとは2型糖尿病の治療薬として開発され、日本では2020年6月に「オゼンピック皮下注SD」として販売が開始されました。
インスリンの分泌を促して血糖値の急上昇を防ぐ作用に加え、脳の摂食中枢に働きかけて食欲を抑える作用や、胃の動きをゆっくりにして満腹感を持続させる作用があります。
これらの作用から体重減少効果も高いことが臨床試験で確認されており、減量目的の自由診療でも広く処方されるようになりました。
世界的な減量需要の急増で品薄に
オゼンピックが世界的に注目を集めた背景には、海外セレブやSNSを通じた情報拡散があります。
体重減少効果の高さが口コミやメディアで広まったことで、本来の適応疾患である2型糖尿病の患者さんだけでなく、減量目的で使用を希望する方が世界中で急増しました。
この急激な需要の増加に対して、製造元であるノボ ノルディスク社の生産能力が追いつかず、国際的な供給不足が発生しています。
こうした品薄状態が、「オゼンピックが製造中止になった」という誤解を生んだ大きな要因です。
オゼンピックが「製造中止」と言われた経緯
「オゼンピック 製造中止」と検索する方の多くは、「なぜ手に入らなくなったのか」を知りたいと考えているでしょう。
ここでは、出荷停止に至った経緯を時系列で整理します。
2021年12月:欧州の製造会社がFDA査察で指摘を受ける
オゼンピックの出荷停止のきっかけとなったのは、製造工程の問題です。
日本で販売されていた「オゼンピック皮下注SD」(1回使い切りタイプ)は、製造工程の一部を欧州の提携製造会社に委託していました。
2021年12月、その提携製造会社がFDA(米国食品医薬品局)の査察を受けた際に、GMP(医薬品の製造管理および品質管理の基準)に関する指摘を受け、製造と輸出を一時的に中止するという判断に至りました。
この問題はオゼンピックのお薬自体の品質や安全性に問題があったわけではなく、あくまで製造工程の管理体制に対する指摘です。
すでに日本へ出荷されていた製品の品質にも影響はないと、ノボ ノルディスク ファーマは明確に説明しています。
2022年2月:ノボ ノルディスク ファーマが出荷調整・停止を発表
2022年2月14日、ノボ ノルディスク ファーマは、オゼンピック皮下注0.25mg SD・0.5mg SD・1.0mg SDについて、出荷調整および出荷停止が発生する見込みであることを正式に発表しました。
具体的には、1.0mg製剤は2022年3月初旬以降、0.25mg・0.5mg製剤は同年3月中旬以降に出荷停止となりました。
再稼働時期は当時「未定」とされ、同社は医療機関に対して「新規患者さまへの処方を控えてほしい」「代替薬への切り替えを検討してほしい」と要請しました。
同日、日本糖尿病学会と日本糖尿病協会も対応を発表し、「美容・痩身・減量等を目的とした適応外使用は決してしないでください」と強く呼びかけました[2]。
2022年5月:新規格「オゼンピック皮下注2mg」として再販売
出荷停止の影響を受けて、ノボ ノルディスク ファーマは代替となる製品の供給を急ぎました。
「オゼンピック皮下注2mg」は出荷停止となった「皮下注SD」よりも先に2018年に製造承認を取得しており、2022年5月25日に新たに販売が開始されました。
新規格は、以前の「1回使い切りタイプ(SD)」から「1本で複数回使用できるペン型注入器」に変更されています。
有効成分のセマグルチドは従来品と同じであり、お薬としての効果や安全性に違いはありません。
つまり、オゼンピックは「製造中止」ではなく、「旧規格の出荷停止」と「新規格での再販売」がおこなわれたというのが正確な経緯です。
オゼンピックの供給不足が続いている3つの原因
旧規格の出荷停止問題は新規格の発売によって解消されましたが、オゼンピックの供給不足自体はその後も続いています。
「なぜまだ手に入りにくいの?」という疑問に対して、3つの原因を解説します。
原因①:世界的な減量需要の爆発的な増加
オゼンピックの供給不足が長引いているもっとも大きな原因は、減量目的での需要が世界中で爆発的に増加したことです。
海外ではSNSやメディアを通じて「痩せる注射」として広く知られるようになり、糖尿病ではない方が減量目的で使用するケース(適応外使用)が急増しました。
とくに米国では、肥満治療目的でのオゼンピックの処方が急激に拡大し、製造元のノボ ノルディスク社の生産能力を大幅に上回る需要が生まれました。
日本国内でも、美容クリニックやオンライン診療を通じた減量目的の処方が増加しており、本来の適応である2型糖尿病の患者さんへの供給に影響が出る事態となっています。
日本糖尿病学会や日本糖尿病協会は繰り返し、減量目的での適応外使用を控えるよう医療機関に要請しています。
原因②:製造キャパシティの限界
GLP-1受容体作動薬は、一般的な経口薬(飲み薬)と比較して製造工程が複雑で、大量生産が難しいという特徴があります。
オゼンピックの有効成分であるセマグルチドはペプチド(たんぱく質の一種)であり、化学合成ではなくバイオテクノロジーを用いた高度な製造工程が必要です。
製造設備の新設や増強には数年単位の時間がかかるため、需要が急増しても短期間で供給量を大幅に増やすことが難しいのが現状です。
ノボ ノルディスク社は製造能力の拡大に向けた大規模な投資を進めていますが、生産量が世界的な需要に追いつくにはまだ時間がかかるとされています。
原因③:糖尿病患者への供給を優先する方針
製造元のノボ ノルディスク ファーマは、限られた供給量の中で、2型糖尿病の治療を最優先とする方針を明確にしています。
オゼンピックは本来、食事療法や運動療法だけでは血糖コントロールが難しい2型糖尿病の患者さんのために開発されたお薬です。
減量目的での需要によって本来の治療を必要とする患者さんにお薬が届かないという事態は、医療上の深刻な問題です。
この方針に基づき、多くの医療機関では減量目的でのオゼンピックの新規処方を制限したり、代替薬を案内したりする対応を取っています。
オゼンピックの現在の供給状況
「今、オゼンピックは処方してもらえるの?」という疑問を持っている方も多いでしょう。
ここでは、現在の供給状況について分かる範囲で解説します。
糖尿病治療目的であれば処方は可能
2型糖尿病の治療目的であれば、オゼンピックの処方は現在も継続されています。
出荷停止問題の後に発売された「オゼンピック皮下注2mg」が主な供給源となっており、糖尿病の患者さんへの安定供給が最優先されている状況です。
ただし、医療機関や地域によっては在庫状況にばらつきがあるため、処方を希望する場合はかかりつけの医療機関に最新の供給状況を確認してください。
減量目的の処方は制限されている場合が多い
減量目的(自由診療)でのオゼンピックの処方は、多くの医療機関で制限されている状況が続いています。
供給が不安定な中で糖尿病の患者さんへの安定供給を優先する方針から、減量目的での新規処方を見送っているクリニックも少なくありません。
一部の美容クリニックやオンライン診療では減量目的での処方をおこなっている場合もありますが、供給状況によっては予告なく処方が中止される可能性もあります。
減量目的でGLP-1受容体作動薬の使用を検討している場合は、オゼンピックに限定せず、マンジャロなど他のお薬も含めて医師に相談することをおすすめします。
個人輸入は絶対に避けるべき
オゼンピックが手に入りにくい状況を背景に、海外からの個人輸入を検討する方もいますが、これは安全性の観点から強くおすすめできません。
個人輸入品には偽造品や品質が保証されない製品が含まれている可能性があり、個人輸入したお薬で重大な副作用が出た場合、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
オゼンピックは冷蔵保存が必要な注射製剤であり、保管状態が不適切なお薬を使用すると効果が得られないだけでなく、健康上のリスクも伴います。
お薬の入手は、必ず国内の医療機関で医師の診察を受けたうえでおこなってください。
旧規格(皮下注SD)と新規格(皮下注2mg)の違い
出荷停止となった旧規格の「オゼンピック皮下注SD」と、現在販売されている「オゼンピック皮下注2mg」はどのような違いがあるのでしょうか。
両者の違いを正しく理解しておきましょう。
最大の違いは注射器の「使用回数」
旧規格と新規格の最大の違いは、注射器の使用回数です。
旧規格の「オゼンピック皮下注SD」は用量ごとに1回使い切りの注射器でしたが、新規格の「オゼンピック皮下注2mg」は1本に2mg分のセマグルチドが入っており、用量に応じて複数回使用できる設計に変更されています。
たとえば1回0.5mgを注射している方の場合、1本のペンで4回分(4週間分)のお薬が入っている計算です。
1回0.25mgの方であれば8回分、1回1.0mgの方であれば2回分を1本で使用できます。
有効成分と効果は同じ
新規格のペンは注射器の形状や使用回数が変わっただけであり、有効成分のセマグルチドは旧規格とまったく同じです。
お薬としての効果や安全性に違いはなく、旧規格を使用していた方が新規格に切り替えても、治療効果に影響が出る心配はありません。
ただし、新規格のペンは用量をダイヤルで調節してから注射する方式のため、旧規格のシンプルな操作とは異なります。
初めて新規格を使用する際は、医師や薬剤師から使い方の説明をしっかり受けてから開始してください。
注射針は毎回交換が必要
新規格の「オゼンピック皮下注2mg」は1本で複数回使用する設計ですが、注射針は毎回新しいものに交換する必要があります。
同じ針を繰り返し使用すると、針先が曲がったり衛生面で問題が生じたりするリスクがあるためです。
使用済みの注射針は、しっかりフタのできる硬い容器に入れて、医療機関に返却するか自治体のルールに従って廃棄してください。
オゼンピックが手に入らない場合の代替薬
オゼンピックの供給が不安定な中で、代わりに使えるお薬の選択肢を知っておくことも大切です。
ここでは、医師から切り替えを提案されることが多い代表的な代替薬を解説します。
マンジャロ(チルゼパチド):GIP/GLP-1受容体作動薬
マンジャロは、GIPとGLP-1の2つの受容体に同時に作用する「デュアルアゴニスト」と呼ばれる新しいタイプのお薬です。
臨床試験「SURPASS-2」では、マンジャロの標準用量(5mg)がオゼンピックの最大用量(1.0mg)を上回る体重減少効果を示したと報告されており、減量効果の面ではオゼンピック以上の結果が期待できる可能性があります。
2023年4月に日本で発売され、2型糖尿病の治療薬として保険適用されています。
減量目的の自由診療でも処方が広がっており、オゼンピックの供給が不安定な中でもっとも注目されている代替薬の一つです。
リベルサス(セマグルチド経口薬):飲み薬タイプのGLP-1
リベルサスは、オゼンピックと同じ有効成分のセマグルチドを含む飲み薬(経口薬)です。
注射が苦手な方にとっては毎日飲むだけで済むリベルサスのほうが始めやすいと感じるかもしれません。
ただし、注射タイプのオゼンピックと比較すると体内への吸収が安定しにくく、体重減少効果はオゼンピックのほうが高いとされています。
また、リベルサスは空腹時に服用する必要があり、服用後30分は飲食を控えるなど、飲み方にルールがある点にも注意が必要です。
ウゴービ・ゼップバウンド:肥満症治療薬として承認されたお薬
ウゴービは、オゼンピックと同じ有効成分であるセマグルチドをより高い用量(最大2.4mg)で使用できるよう開発された、肥満症治療に特化した注射薬です。
適用条件としては、BMIが27kg/m²以上で肥満に関連する健康障害を2つ以上有する方、またはBMIが35kg/m²以上の方などが対象で、条件を満たす方であれば保険診療で処方を受けられる可能性があります。
ゼップバウンドは、マンジャロと同じ有効成分のチルゼパチドを高用量で使用できる肥満症治療薬で、チルゼパチドの強力な体重減少効果をより高い用量で活かせる点が特徴です。
自分に合ったお薬を選ぶには、効果の高さだけでなく副作用の出方や生活スタイルとの相性も考慮し、必ず医師と相談のうえで決めてください。
代替薬に切り替える際の注意点
オゼンピックから他のGLP-1受容体作動薬に切り替える場合、いくつかの注意点があります。
お薬ごとに用量設計や増量スケジュールが異なるため、切り替え直後は血糖コントロールが一時的に変動する可能性があります。
日本糖尿病学会は、代替薬への切り替え時には血糖自己測定や血液検査で適宜モニタリングをおこない、血糖コントロールの急激な悪化に注意するよう呼びかけています。
いずれの場合も自己判断ではなく、必ず医師の指示に従って切り替えをおこなってください。
よくある質問
-
Q. オゼンピックは本当に製造中止になったの?
-
オゼンピック自体が完全に製造中止になったわけではありません。
2022年に出荷停止となったのは旧規格の「オゼンピック皮下注SD」(1回使い切りタイプ)であり、原因は欧州の提携製造会社がFDA査察でGMP上の指摘を受けたことによる製造・輸出の一時中止です。
その後、新規格の「オゼンピック皮下注2mg」として再販売されており、有効成分は従来品と同じセマグルチドで、効果や安全性に違いはありません。
-
Q. なぜオゼンピックは手に入りにくいの?
-
手に入りにくい主な原因は、世界的な減量需要の急増です。
SNSやメディアの影響でオゼンピックが「痩せる注射」として広まり、本来の適応である2型糖尿病の患者さんに加えて減量目的の需要が爆発的に増えました。
加えて、GLP-1受容体作動薬はバイオ医薬品であるため製造工程が複雑で、短期間で大幅に生産量を増やすことが技術的に難しいという事情もあります。
-
Q. オゼンピックの出荷はいつ正常に戻る?
-
正確な時期を断定することは困難ですが、ノボ ノルディスク社は製造能力の拡大に向けた大規模な設備投資を進めています。
ただし、製造設備の増強には数年単位の時間がかかるため、短期間で供給不足が完全に解消される見通しは立っていないのが現状です。
供給状況は随時変動するため、最新の情報は処方元の医療機関や薬局に直接確認することをおすすめします。
-
Q. オゼンピック使用中に供給が止まったらどうすればいい?
-
現在オゼンピックを使用中の方は、お薬の供給が途絶えた場合に備えて、主治医とあらかじめ代替薬について相談しておくことをおすすめします。
同じGLP-1受容体作動薬であるマンジャロ(チルゼパチド)やリベルサス(経口セマグルチド)などが代替の選択肢として挙げられます。
とくに2型糖尿病の治療目的で使用している方がお薬を中断すると血糖コントロールが急激に悪化するリスクがあるため、必ず医師と相談のうえで対応を決めましょう。
まとめ
オゼンピックは完全に製造中止になったわけではなく、旧規格(皮下注SD)が欧州の製造会社のGMP問題により一時的に出荷停止となったことが「製造中止」と誤解された経緯があります。
その後、新規格の「オゼンピック皮下注2mg」として再販売されており、有効成分や効果はまったく同じです。
ただし、世界的な減量需要の急増、製造キャパシティの限界、糖尿病患者への供給優先の方針という3つの要因から、現在も供給が不安定な状況が続いています。
オゼンピックが入手困難な場合は、マンジャロ・リベルサス・ウゴービ・ゼップバウンドなどの代替薬を医師と相談のうえで検討してください。
個人輸入は偽造品リスクや副作用被害救済制度の対象外となるため、絶対に避けるべきです。
不安がある場合は自己判断せず、必ず医師に相談して安全に治療を続けてください。
参考文献
[1] ノボ ノルディスク ファーマ株式会社「オゼンピック皮下注SDに関する重要なお知らせ 出荷調整・保留についてのご案内」(2022年2月14日)
[2] 一般社団法人日本糖尿病学会「オゼンピック皮下注SDの製造輸出一時中止に伴う出荷調整への対応について」(2022年2月14日) https://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?content_id=257
※効果・効能・副作用のあらわれ方は個人差がございます。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。