「食事を減らしているのになかなか痩せない」「同じ量を食べているのに自分だけ太りやすい気がする」と悩んでいませんか?
その原因のひとつとして注目されているのが、腸内に存在する「痩せ菌」と「デブ菌」のバランスです。
痩せ菌は短鎖脂肪酸という物質を作り出し、脂肪の蓄積を抑えたり代謝を高めたりする働きが期待されています[1]。
一方で、痩せ菌を増やすには食事の見直しだけでなく、運動や睡眠といった生活習慣の改善もあわせて取り組むことが大切です。
この記事では、痩せ菌の基礎知識から、食事や生活習慣で痩せ菌を増やす具体的な方法、デブ菌を増やしてしまうNG習慣までを詳しく解説します。
痩せ菌とは?痩せやすい体質に関わる腸内細菌の仕組み
痩せ菌とは、腸内で食物繊維などをエサにして「短鎖脂肪酸」という物質を作り出す腸内細菌の総称です。
痩せ菌が多い腸内環境を目指すことが、ダイエットを効率よく進めるための土台づくりにつながると考えられています[1]。
痩せ菌(バクテロイデス)の正体と短鎖脂肪酸の働き
痩せ菌の代表格は、バクテロイデーテス門に属する「バクテロイデス」というグループの腸内細菌です[2]。バクテロイデスは水溶性食物繊維をエサにして、酢酸・酪酸・プロピオン酸などの短鎖脂肪酸を作り出します[3]。
短鎖脂肪酸には、脂肪細胞が余分な栄養を取り込むのをブロックする働きが期待できるでしょう[1]。さらに、全身の代謝を活性化して余ったエネルギーを消費しやすくする作用[1][4]や、腸内を弱酸性に保って悪玉菌の増殖を抑える作用も報告されています[5]。
加えて、短鎖脂肪酸の一種である酪酸は、腸管ホルモンであるGLP-1の分泌を促し、血糖コントロールにも関与する可能性があるとされています[6]。
デブ菌(ファーミキューテス)との違い
デブ菌と呼ばれるのは、ファーミキューテス門に属する腸内細菌のグループです。
デブ菌は食べ物からより多くのエネルギーを吸収する力に優れており、少ない食事量からでも効率よくカロリーを取り込んでしまいます[7]。余ったエネルギーは脂肪として体内に蓄えられるため、デブ菌が多い腸内環境では太りやすくなると考えられています。
デブ菌は高脂肪・高糖質の食事を好むため、こうした食事が続くとデブ菌が優勢になりやすいでしょう。
腸内フローラの理想バランス「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」
私たちの腸内には約100兆個もの腸内細菌が存在し、その生態系は「腸内フローラ(腸内細菌叢)」と呼ばれています[8]。腸内フローラは大きく分けて善玉菌・悪玉菌・日和見菌の3種類で構成されており、理想的な割合は「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」とされています[8]。
痩せ菌もデブ菌も日和見菌に分類されており、善玉菌が優勢な環境では痩せ菌が活性化してデブ菌の働きを抑えやすくなるでしょう。腸内フローラのバランスを善玉菌優勢に保つことが、痩せ菌を活性化させる基本的な考え方だといえます。
痩せ菌を増やす食べ物と食事のポイント
痩せ菌を増やすためにもっとも大切なのは、毎日の食事を見直すことです。
痩せ菌のエサとなる食物繊維を積極的に摂り、善玉菌を補給できる発酵食品を取り入れることが基本となります。研究では、低脂肪・高食物繊維の食事を続けたグループで24時間後から腸内フローラに変化が見られたとの報告もあります[9]。
水溶性食物繊維が豊富な食品を毎日摂る
痩せ菌のエサとなるのは、水溶性食物繊維です。水溶性食物繊維は腸内で善玉菌や痩せ菌に発酵・分解され、短鎖脂肪酸の材料になります[9]。
水溶性食物繊維が豊富な食品としては、もち麦・ごぼう・オクラ・アボカド・海藻類・きのこ類・納豆・豆類などが挙げられます。とくにもち麦はβ-グルカンという水溶性食物繊維を多く含んでおり、白米に混ぜて炊くだけで手軽に摂取できるため、腸活を始めたい方にも取り入れやすい食材です。
発酵食品で善玉菌を直接取り入れる
発酵食品には乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が豊富に含まれており、食べることで腸内に良い菌を直接補給できます。
おすすめの発酵食品は、ヨーグルト・納豆・キムチ・ぬか漬け・味噌・酢などです。ビフィズス菌は水溶性食物繊維を発酵分解する際に短鎖脂肪酸を作り出す働きがあるため、痩せ菌をサポートする役割が期待できます[10]。
大切なのは毎日継続して摂ることです。朝食にヨーグルトを加える、食事に味噌汁をつけるなど、無理なく習慣化できる方法を見つけましょう。
オリゴ糖を含む食品で痩せ菌のエサを補給する
オリゴ糖は腸内の善玉菌やビフィズス菌のエサとなり、それらを増殖させる「プレバイオティクス」として知られる成分です。
オリゴ糖を多く含む食品には、玉ねぎ・ごぼう・バナナ・大豆・はちみつなどがあります。
発酵食品と一緒に摂ることで相乗効果が生まれやすいため、「菌を入れる(発酵食品)+菌を育てる(オリゴ糖・食物繊維)」の考え方で食事を組み立てることがポイントです。
レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)を活用する
レジスタントスターチとは、小腸で消化されずに大腸まで届く「難消化性でんぷん」のことです。大腸で腸内細菌のエサとなり、食物繊維と同じように短鎖脂肪酸の産生を促す働きが期待できます[11]。
レジスタントスターチを多く含む食品としては、冷ましたご飯・緑色のバナナ・じゃがいも・インゲン豆・オートミールなどが挙げられます。とくに、炊いたご飯を冷ますとでんぷんの構造が変化してレジスタントスターチが増えるため、おにぎりや冷やし茶漬けなどで手軽に摂取できます。
痩せ菌を増やす生活習慣4選
食事だけでなく、日常の生活習慣も腸内環境に大きく影響します。
運動不足やストレス、睡眠の乱れは腸内フローラのバランスを崩し、痩せ菌が減少する原因になりかねません。食生活の改善とあわせて生活習慣も見直すことで、痩せ菌がより増えやすい体内環境を整えられるでしょう。
適度な運動で腸の動きを活発にする
適度な運動を習慣にすることで、腸の蠕動運動が促進され、腸内細菌の活動が活発になると考えられています[8]。
とくにウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動は、自律神経のバランスを整え、副交感神経が優位になりやすい状態を作ります。副交感神経が優位になると腸の動きが活発化するため、善玉菌や痩せ菌が働きやすい環境になりやすいでしょう。
激しい運動は逆にストレスホルモンの分泌を増やして腸内環境を乱す可能性があるため、無理のない範囲で継続することが大切です。まずは1日20〜30分程度の軽い運動から始めて、腸が活発に動く体づくりを目指しましょう。
質の良い睡眠で自律神経を整える
睡眠の質は自律神経のバランスに直結しており、自律神経の乱れは腸内環境を悪化させる要因のひとつです。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人は6時間以上の睡眠時間の確保が推奨されています[12]。睡眠が不足すると交感神経が優位になりやすくなり、腸の動きが鈍って悪玉菌が増殖しやすい環境になると考えられています。
休日の寝だめで平日の睡眠不足を補おうとすると体内時計が乱れるため、できるだけ毎日同じ時間に就寝・起床するリズムを整えることが望ましいとされています[12]。
ストレスケアで腸内環境の悪化を防ぐ
ストレスは腸と脳の密接な関係(脳腸相関)を通じて、腸内環境に悪影響を及ぼす可能性があります。
強いストレスを受けると交感神経が優位になり、腸の蠕動運動が低下して善玉菌が減少しやすくなります。その結果、悪玉菌が増えて痩せ菌の働きが弱まり、太りやすい腸内環境に傾くリスクが高まります。
趣味の時間を持つ、深呼吸やストレッチを日課にするなど、自分に合ったストレス解消法を見つけることが大切でしょう。ストレスを完全になくすことは難しくても、こまめにケアする習慣をつけることで腸内環境の悪化を防げる可能性があります。
毎日の排便リズムを整えて腸をきれいに保つ
便秘が続くと腸内に老廃物が長時間とどまり、悪玉菌が増殖しやすい環境になります。悪玉菌が優勢になると痩せ菌の活動が抑えられ、太りやすい腸内フローラへと変化してしまう可能性があります。
排便リズムを整えるためには、毎朝決まった時間にトイレに座る習慣をつけることが効果的です。朝起きたらコップ1杯の水を飲んで腸を刺激し、朝食をしっかり摂ることで腸の蠕動運動が促されやすくなります。
デブ菌を増やしてしまうNG習慣
痩せ菌を増やす努力をしていても、デブ菌が優勢になるような習慣が続いていては効果が半減してしまいます。
食事の内容や生活パターンによっては、知らないうちにデブ菌のエサを与えている可能性があります。自分に当てはまるものがないか、チェックしてみてください。
高脂肪・高糖質の食事に偏っている
デブ菌は高脂肪・高糖質の食品を好み、こうした食事が続くとデブ菌が腸内でどんどん増殖していきます[13]。ラーメン・ハンバーガー・揚げ物・スナック菓子・白砂糖を多く使ったスイーツなどが、デブ菌のエサとなりやすい食品です。
食事の内容を少し変えるだけで腸内フローラのバランスは変化し始める[9]ため、まずは1日1食から見直してみてください。
食品添加物の多い食事が中心になっている
コンビニ弁当やファストフード、加工食品に多く含まれる食品添加物も、腸内環境に悪影響を与える可能性があると指摘されています[14]。
一部の乳化剤は腸内で炎症を引き起こすリスクがあるとされ、防腐剤は腸内細菌のバランスを崩す原因となる場合があります。
食品表示を確認して添加物の少ないものを選ぶ、自炊の回数を増やすなどの工夫を取り入れるだけでも、腸内環境への負担を軽減できるでしょう。
過度な食事制限で食物繊維が不足している
ダイエット目的で極端に食事量を減らすと、痩せ菌のエサである食物繊維まで不足してしまうことがあります。食物繊維が足りなくなると痩せ菌は十分に活動できず、短鎖脂肪酸の産生量も減ってしまいます[3]。その結果、脂肪が蓄積されやすくなり、食事制限をしているのに痩せにくいという悪循環に陥る可能性があります。
痩せ菌のためには、食べる量を減らすのではなく食べるものの質を高める意識が重要です。
痩せ菌に関するよくある質問
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Q1. 痩せ菌を増やすとどんな効果が期待できますか?
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痩せ菌が増えると短鎖脂肪酸の産生量が増え、脂肪の吸収抑制や代謝の活性化が期待できます[1]。腸内環境が整うことで便通の改善にもつながり、体の中から痩せやすい状態に近づけるでしょう。
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Q2. 痩せ菌が増えるまでどのくらいの期間がかかりますか?
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研究では、食事内容を変えると24時間後から腸内フローラに変化が見られ始めたという報告があります[9]。ただし、腸内環境がしっかり変わるまでには2週間程度の継続が必要とされており、まずは2週間を目安に食生活を見直してみるのがおすすめです。
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Q3. サプリメントで痩せ菌を増やせますか?
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乳酸菌やビフィズス菌を含むサプリメントは、善玉菌を補給して腸内環境を整えるサポートが期待できます。
ただし、サプリメントだけで痩せることは難しく、食物繊維が豊富な食事や規則正しい生活習慣と組み合わせることが大切です。
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Q4. 痩せ菌が増えたらたくさん食べても太りませんか?
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痩せ菌が多い腸内環境では太りにくくなる可能性はありますが、食べすぎれば当然体重は増加します。痩せ菌はあくまでダイエットをサポートする存在であり、バランスの良い食事と適度な運動の継続が健康的な体型維持の基本です。
痩せ菌を増やす食事と生活習慣まとめ
痩せ菌とは、腸内で短鎖脂肪酸を作り出して脂肪の蓄積を抑え、代謝を高める働きが期待できる腸内細菌です。
ただし、痩せ菌を増やすだけで痩せるわけではなく、食事と生活習慣の両面から取り組むことが大切です。
水溶性食物繊維・発酵食品・オリゴ糖・レジスタントスターチを意識した食事を毎日続けることが、痩せ菌を増やす方法の基本になります。
適度な運動・質の良い睡眠・ストレスケア・排便リズムの安定といった生活習慣の見直しも、痩せ菌が活躍しやすい腸内環境づくりに欠かせません。
今日の食卓から食物繊維や発酵食品をひとつプラスして、腸内から健康的なダイエットを始めてみてはいかがでしょうか。
参考文献
[1] Kimura I, Ozawa K, et al. Short-chain fatty acids and ketones directly regulate sympathetic nervous system activity via G protein-coupled receptors. Nat Commun. 2011;2:226.
[2] Ley RE, Turnbaugh PJ et al. Microbial ecology: human gut microbes associated with obesity. Nature. 2006;444(7122):1022-3.
[3] Macfarlane S, Macfarlane GT. Regulation of short-chain fatty acid production. Proc Nutr Soc. 2003;62(1):67-72.
[4] Kimura I, Ichimura A, et al. Free Fatty Acid Receptors in Health and Disease. Physiol Rev. 2020;100(1):171-210.
[5] 厚生労働省「e-ヘルスネット 食物繊維の必要性と健康」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-05-001.html
[6] Tolhurst G, Heffron H, et al. Short-chain fatty acids stimulate glucagon-like peptide-1 secretion via the G-protein-coupled receptor FFA2. Diabetes. 2012;61(2):364-71.
[7] Turnbaugh PJ et al. “An obesity-associated gut microbiome with increased capacity for energy harvest.” Nature. 2006;444(7122):1027-1031. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17183312/
[8] 公益財団法人長寿科学振興財団「健康長寿ネット 腸内細菌叢(腸内フローラ)とは」(2019年11月)
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/kenko-cho/chonai-saikin.html
[9] David LA et al. “Diet rapidly and reproducibly alters the human gut microbiome.” Nature. 2014;505(7484):559-563. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24336217/
[10] De Vuyst L, et al. Effects of inulin-type fructans on carbohydrate fermentation and digestive physiology. J Nutr. 2007;137(11 Suppl):2594S-605S.
[11] Cummings JH, et al. Digestion of starch in the human small intestine. Am J Clin Nutr. 1996;64(3):371-81.
[12] 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html
[13] Turnbaugh PJ, et al. The Effect of Diet on the Human Gut Microbiome: A Metagenomic Analysis in Humanized Gnotobiotic Mice. Sci Transl Med. 2009;1(6):6ra14.
[14] Chassaing B, et al. Dietary emulsifiers impact the mouse gut microbiota promoting colitis and metabolic syndrome. Nature. 2015;519(7541):92-6.
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